About 私たちの思い
コンセプト
想像してみてください。いちばん最初に人類が、火の傍らに置いておいた水がお湯になったのを経験したときのことを。きっと、人類最初の器は貝だったと思います。貝に水を入れておいたのが、何かの間違いでたまたま火の傍らに置かれて、沸騰してお湯になった。それを経験したときの喜び、その驚き。それはたいへんナイーブなものだったでしょう。その喜びを、私たちは忘れてはならないと思うのです。
火を使うことを覚えた人間は、
他の生物と違って、料理をする自由を手にした。
辰巳芳子『いのちと味覚』(NHK出版新書)より
有限の中の無限
「火と肉の出合い」、とてもシンプルで、根源的なものとしての。太古より火と肉の出合いのなかで育まれてきた人類。それに連なるわたしたちは、この「火」がこの「肉」の持てる限りの味を引き出そうとするには、どのような火の使い方をすれば最善なのか試行錯誤を繰り返します。そしてその最良の答えを絶えずご提供することに努めたいと思います。
視覚が重視される現代にあって、どのような「火入れ」をすれば、この「肉」の可能性をもっとも五感で体感していただけるのか、その弛まぬ挑戦を止めません。特注でオーダーメイドした薪火ストーブによる牛肉料理をはじめとして、炭火、焚火、石焼、煮る、茹でる、炙る……、一片の有限のお肉が包んでいる無限の可能性を追求し続けます。
そして、「火と肉の出合い」という人類にとって共通の、始原の記憶を喚起し、ともに食べることそれ自体の歓びをみなで分かち合うこと。「食」をめぐる、人間にとって本質的で不可欠だった豊かな時間と場を、肩のちからを抜いてつくりだしたいと思います。
人間が長大な時間をかけつくりあげた「食文化」を通じて、もういちど、人間らしくただ「共に在ること」のしあわせをこれから、ここから時間をかけてゆっくりとつくりあげていきます。